① 気分が高揚する
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普段より気分が高ぶり、話したいことや、やりたいことが次々に浮かびます。会話が止まらない、予定を詰め込む、あまり眠らなくても元気に動けるなど、睡眠や行動にも変化が現れます。
本人は「調子がよいだけ」と感じていても、周囲から「いつもと違う」と指摘されることがあります。気分のよさだけでなく、活動のペースが普段からどのくらい変わったかを振り返ります。
桜ヶ丘こころ診療所聖蹟桜ヶ丘の心療内科・精神科双極性障害(躁うつ病)について
双極性障害は、気分や活動性が高まる「躁状態・軽躁状態」と、落ち込みや意欲の低下が続く「うつ状態」が現れる病気です。治療では、今の症状を和らげるとともに、安定した後も気分安定薬などを続け、生活に支障を来す気分の波を防いでいきます。
精神科の外来では、うつの相談から始まり、過去の「なぜか元気だった時期」を振り返る中で、双極性障害が疑われることがあります。特に双極Ⅱ型は軽躁状態が見過ごされやすく、うつ病との見極めに時間がかかる場合があります。
治療を続けるうえでは、薬への迷いや「以前のように活動したい」という気持ちも無視できません。症状を抑えることと、自分らしい生活を続けることの両方を、診察で考えていきます。
症状の変化に気づく
以下の症状は、自分の状態を振り返る手がかりになります。双極性障害の診断では、症状の有無だけでなく、普段との違い、続いている期間、生活への影響を合わせて確認します。
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普段より気分が高ぶり、話したいことや、やりたいことが次々に浮かびます。会話が止まらない、予定を詰め込む、あまり眠らなくても元気に動けるなど、睡眠や行動にも変化が現れます。
本人は「調子がよいだけ」と感じていても、周囲から「いつもと違う」と指摘されることがあります。気分のよさだけでなく、活動のペースが普段からどのくらい変わったかを振り返ります。
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落ち込んで仕事や家事が手につかない時期と、普段以上に活動する時期を繰り返すことがあります。元気な時期に仕事や予定を引き受けすぎて、落ち込むと続けられなくなる、といった生活の変化から気づく場合もあります。
ただし、ADHDに伴う気分の変動など、別の原因で浮き沈みが目立つこともあります。気分とともに睡眠や活動量がどう変わり、その状態がどのくらい続いたかを確認します。
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躁状態は、楽しそうにする形だけでなく、怒りっぽさとして現れることもあります。周囲の助言に激しく反発する、買い物や契約を十分に考えず進めるなど、普段とは違う行動が目立つ場合があります。
睡眠時間の短縮や多弁も重なり、家族との衝突や支払いの問題が出ているときは、早めの相談を勧めます。「性格の問題」「ストレスのせい」だけで片づけず、変化の背景を確かめます。
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うつ病の治療を続けても落ち込みが長引く場合は、これまでの経過を見直すことがあります。うつの時期だけでなく、「妙に元気だった」「あまり眠らず活動していた」時期がなかったかも伺います。
双極性障害のうち、軽躁の時期が目立ちにくい双極Ⅱ型は、うつ病との区別が難しい病型です。治療法が異なるため、過去の症状や周囲から見た変化など、複数の手がかりから慎重に見極めます。
必要なところから、少しずつ
図を拡大する 双極性障害は、以前は「躁うつ病」と呼ばれ、現在は「双極症」という名称も使われています。気分が高ぶる躁・軽躁状態と、気分や意欲が低下するうつ状態が、経過の中で現れます。
変化するのは気分だけではありません。睡眠、話す量、活動量、お金の使い方にも影響し、それまでの仕事や人間関係を保ちにくくなることがあります。
双極性障害の診断では、単なる気分のよしあしではなく、普段とは異なる変化が睡眠や行動にも広がっているかを見ます。うれしい出来事があって、一時的に気分が上がることとは区別します。
例えば、特別な理由もなく睡眠が短くなり、数日以上にわたって話す量や活動が増えている場合は、経過を詳しく確認します。期間だけでなく、変化の程度や生活への影響も診断の材料になります。
躁とうつの現れ方に、決まった周期があるわけではありません。うつの時期が長く続く人もいれば、症状が落ち着いた時期を長く保てる人もいます。
診察では、「最近は落ち込んでいる」という今の状態だけでなく、数か月、数年の経過を振り返ります。症状のない時期も含め、その人の気分の波を捉えていきます。
図を拡大する ここでは、気分の状態を躁・軽躁・軽いうつ・うつの4つに分けて説明します。外来では、軽躁の時期を「調子がよかった頃」と捉え、安定した状態を物足りなく感じる方もいます。治療では、本人の実感と、周囲から見た状態の違いも確認します。
躁状態では、気分の高揚や強いイライラとともに、活動性が大きく高まります。仕事や人間関係に明らかな支障が出たり、現実的な判断が難しくなって多額の借金を抱えたりすることがあります。
本人が不調と感じにくい点も特徴です。「自分は問題ない」と考えていても、心配な行動や対人トラブルが増え、周囲の働きかけで治療につながる場合があります。
軽躁状態でも、普段より気分や活動性が高まり、睡眠や会話に変化が出ます。ただし、躁状態のような著しい生活上の支障は目立たず、仕事が進んでいると感じる場合もあります。
「本来の自分に戻った」と受け止め、治療中も再びその状態を望む方がいます。ただし、軽躁は安定した状態とは異なり、症状が強まって躁状態に進む場合もあるため、その後の変化に注意します。
落ち込みが強くなくても、疲れやすさや意欲の低下が続くことがあります。仕事には行けるものの、帰宅後は以前ほど動けず、休日も疲れを取るだけで終わってしまうような状態です。
治療を経て安定した場合は基本的にこの軽うつ状態になります。外から見て安定の一方で自覚的には不快感もある状態のため葛藤が生じますが、その中で薬の治療をやめずに続けることが大事です。
うつ状態では、落ち込みや楽しさの低下に加え、睡眠、食欲、集中力にも症状が広がります。着替えや入浴、連絡への返信といった普段の行動にも、大きな負担がかかることがあります。
うつ状態が長く続き、うつ病として抗うつ薬による治療を受けても改善せず、強いつらさを感じる場合があります。診断を見直し、双極性障害に合った治療に切り替えることで、改善につながることがあります。
図を拡大する 躁状態では、睡眠時間が短くても疲れを感じにくくなります。「眠りたいのに眠れず、翌日つらい」という不眠とは異なり、本人は睡眠が足りているように感じることがあります。
深夜まで仕事や片づけを続け、早朝からまた活動するなど、生活のペースが変わります。深夜にも周囲へ連絡するようになると、家族や知人も休めず、負担が広がることがあります。
普段よりよく話すようになり、相手が話し始めても待てなくなることがあります。話題が次々に変わり、本人は頭の回転が速くなったと感じても、周囲はついていきにくくなります。
思いついたことをすぐ伝えたくなり、深夜の電話や大量のメッセージとして表れる場合もあります。会話や連絡の量が、以前と比べてどのくらい増えたかを振り返ります。
自信が普段以上に強くなり、必要な時間や費用を十分に考えず、計画を進めることがあります。仕事を大量に引き受ける、準備のないまま事業を始めようとする、といった行動です。
症状が強いと、根拠の乏しい確信が揺らがず、現実的な判断が難しくなることもあります。多額の借金を抱え、うつ状態に転じた後も、その影響が残る場合があります。
躁状態では、周囲のペースが遅く感じられたり、助言を妨害と受け取ったりして、怒りが強まることがあります。いつもなら流せる一言に激しく反応し、家族や職場との衝突が増える場合があります。
支払いの見通しを立てずに買い物や契約を進めるなど、行動を調整しにくくなることもあります。トラブルが出ているときは、本人が気分の高揚を自覚していなくても相談が必要です。
図を拡大する 気分が沈むだけでなく、以前なら楽しめたことに気持ちが動かなくなります。好きな番組を見ても面白くない、人と会っても楽しめない、といった変化です。
必ずしも「悲しい」と表現されるわけではありません。「何をしても手応えがない」「感情がなくなった感じがする」といった訴えも、診察で確認します。
体が重く、仕事や家事を始めるまでに大きな負担がかかります。「やれば終わる」と分かっていても、着替えや食事の準備に取りかかれず、時間だけが過ぎてしまうこともあります。
外来では、周囲から「怠けているだけでは」と言われ、自分を責めながら相談する方もいます。疲労や意欲の低下が、生活のどこまで広がっているかを見ていきます。
うつ状態では、考える速さや集中力にも影響が出ます。メールを何度読んでも内容が入らない、簡単な選択に時間がかかる、仕事の優先順位を決められない、といった状態です。
本人は「能力が落ちた」と感じることがあります。躁状態のときとの落差から、さらに自分を悲観的に捉え、つらさが強まる場合もあります。
眠れない、朝早く目が覚める、長く眠っても起きられないなど、睡眠の変化が現れます。食欲が落ちる場合もあれば、食べる量が増える場合もあります。
症状が強まると、小さな失敗を重く受け止め、「自分には価値がない」と考えてしまうことがあります。食事が取れなくなるなど、健康面にも影響が出ているときは、早めの対応が必要です。
図を拡大する 双極Ⅰ型は、生活に大きな支障を来す躁状態を経験する病型です。多くの場合にうつ状態も見られますが、診断上は、うつの経験が確認されていなくても、躁状態から診断される場合があります。
躁状態が強いときは、本人の生活を守るためにも、早急な治療が必要です。外来で安全を保つことが難しい場合には、入院治療を検討します。
双極Ⅱ型は、軽躁状態とうつ状態を経験し、明らかな躁状態の経験はない病型です。軽躁が目立ちにくいため、うつの症状だけを見ると、うつ病との区別が難しくなります。
「Ⅱ型だから軽い病気」という意味ではありません。 うつ状態が長引き、仕事や日常生活への負担が大きくなることもあるため、軽躁状態の見極めを行い、治療につなげていくことが大事です。
混合状態では、落ち込みと同時に、考えが次々に浮かぶ、活動が増えるなどの躁・軽躁の症状が重なります。「気分はつらいのに、頭の中だけが忙しい」と感じることもあります。
イライラや不眠だけで、混合状態とは判断できません。強い苦痛に衝動性が重なる場合は、安全面にも配慮し、症状の組み合わせを診察で確認します。
急速交代型は、原則として1年間に4回以上、躁・軽躁・うつの明確なエピソードを認める経過を指します。Ⅰ型・Ⅱ型のどちらでも見られることがあります。
「朝は落ち込み、夕方は元気」といった、一日の中の変化をそのまま数えるものではありません。症状が続いた期間、落ち着いていた時期、薬の変更などを時系列で整理します。
図を拡大する 改善しにくいうつの背景に、双極性障害がある場合があります。診断や治療、生活環境を見直す中で、過去に軽躁状態がなかったかも確かめます。
診察では、「落ち込む前はどう過ごしていたか」を伺います。仕事の引き受け方や睡眠、買い物の変化を振り返ると、それまで相談されていなかった時期の様子が分かることがあります。
軽躁状態は、うつの後に現れると「回復した」と感じられやすくなります。仕事が進む、人に会いたくなるなど、本人にとって好ましい変化として記憶される場合があります。
実際の診療でも、回復と軽躁への移行を見分けるのは、簡単ではありません。本人の実感に加え、周囲が変化や違和感を感じていなかったかも、判断の手がかりになります。
怒りっぽさや浪費が、気分の変化と結びつけられずに見過ごされることがあります。「もともとせっかちな人」「買い物でストレスを発散しているだけ」と受け止められる場合です。
診察では、以前から続く傾向なのか、特定の時期だけ強まったのかを確認します。イライラとともに睡眠や話す量も変わっていれば、気分の状態との関連を考えます。
図を拡大する 双極性障害のうつ状態と、うつ病には、落ち込み、意欲低下、不眠、集中力の低下など、共通する症状が多くあります。現在のつらさだけを聞いても、はっきり区別できない場合があります。
特に双極Ⅱ型では、診察時にはうつ状態が目立ち、過去の軽躁を本人も不調として覚えていないことがあります。一つの症状や質問票だけで判断せず、経過を丁寧に確認します。
診断の大きな手がかりは、これまでに躁状態・軽躁状態があったかどうかです。「気分がよかったか」だけでなく、睡眠が短くなったか、話す量や活動量が増えたかも伺います。
本人の記憶だけでは、変化が分かりにくいこともあります。本人の意向を確認したうえで、家族の気づきや、当時の生活記録を参考にする場合があります。
うつ病として治療していた後に、初めて躁・軽躁状態が現れ、診断が変わる場合があります。過去の軽躁の様子が、後から詳しく分かることもあります。
診断の変更は、必ずしも最初の診察で分かることを見落としていた、という意味ではありません。新しく分かった経過に合わせて、薬の選び方や再発予防の方針を見直します。
図を拡大する ADHDでも、多弁、落ち着かなさ、衝動的な買い物などが見られることがあります。双極性障害との区別では、子どもの頃からの傾向と、ある時期にまとまって現れた変化を分けて考えます。
例えば、以前から忘れ物が多いことと、最近急に眠らず活動するようになったことは、同じ理由とは限りません。両方が併存する場合もあるため、発達歴と気分の経過を確認します。
境界性パーソナリティ障害では、対人関係での不安や見捨てられる感覚に伴い、感情が強く揺れることがあります。相手の言葉や連絡の有無が、変化のきっかけになる場合があります。
診察では、気分が変わる場面や続く時間、睡眠や活動性の変化を合わせて見ます。人間関係で落ち込むことや、気分の変化が速いことだけで、どちらかの病気と決めるものではありません。
双極性障害でも、症状が強い時期に幻聴や妄想が現れることがあります。声が聞こえる、現実と異なる確信がある、という症状だけで統合失調症とは判断できません。
気分や活動性が大きく変化した時期と、幻聴・妄想が出た時期との関係を確認します。症状のない時期も含め、経過を見ながら診断を考えていきます。
図を拡大する 双極性障害には、気分や活動性、睡眠を調整する脳の働きが関係すると考えられています。ただし、特定の物質が多い・少ないという説明だけで、病気全体を説明できる段階ではありません。
本人の意思の弱さや、努力不足が原因ではありません。原因がすべて分かっていなくても、症状や再発を抑える薬はあり、その人の状態に合わせて治療を進めます。
双極性障害には遺伝的な要因も関係しますが、一つの遺伝子だけで発症が決まるわけではありません。家族に同じ病気があるからといって、必ず発症するものでもありません。
遺伝的な影響については研究が続いていますが、まだ分かっていないこともあります。家族の病歴は診断の手がかりの一つであり、誰かに責任を求めるための情報ではありません。
強いストレスや生活リズムの乱れが、発症や再発のきっかけになることがあります。忙しい時期の徹夜、転職、引っ越しなど、生活の変化が重なる場合です。
負担に感じる出来事だけでなく、昇進や結婚など、うれしい変化でも生活のペースが崩れることがあります。明確なきっかけが見つからない場合もあるため、原因を探すことと並行して、今の症状に対応します。
図を拡大する 気分の波が大きいと、活動できる時期と、動けない時期の差が広がります。元気な時期に多くの仕事を引き受け、うつになると締め切りに対応できないなど、継続の難しさにつながる場合があります。
治療では、短期間にどれだけ成果を出せるかだけでなく、無理なく続けられる状態を目指します。症状への治療と、業務量や働き方の調整を組み合わせて考えます。
躁状態での買い物や契約、強い言動による衝突は、気分が落ち着いた後にも影響を残す場合があります。症状が治まっても、支払いや職場との関係を立て直す負担が続くことがあります。
多額の借金では、自己破産の検討が必要になるなど、生活への影響が大きくなる場合もあります。その負担がストレスになり、うつ状態が悪化することもあるため、受診して対策を考えます。
うつ状態では、自分の行動や将来を必要以上に悲観し、強く責めてしまうことがあります。躁状態での出来事への後悔が重なり、つらさが増す場合もあります。
強いうつ状態や混合状態では、衝動的な行動によって安全が脅かされることがあります。症状が悪化すると危険も高まり得るため、早い段階で治療につなげます。
図を拡大する 以前にはなかった激しい言い争いや、周囲との衝突が増えたときは、受診を考えたい状態です。睡眠時間の短縮、多弁、活動量の増加も重なっていれば、躁状態の可能性も含めて確認します。
本人が不調と感じていない場合は、家族の心配が受診のきっかけになることもあります。「病気だから」と説得を重ねるより、眠れていないことや具体的な困りごとから相談につなげます。
支払いが難しい買い物を続ける、重要な契約を急いで決める、職場で大きな混乱が起きるなど、生活への影響が出ている場合は、早めの受診が必要です。本人は気分がよくても、判断や行動が普段から変わっていることがあります。
借金や対人トラブルは、躁状態が治まった後にも影響が続きます。問題が大きくなる前に受診し、治療を始めることを勧めます。
落ち込みや意欲低下が続き、仕事や日常生活が戻らない場合も相談の目安です。うつ病として治療中でも、長期化や強い気分の変動が目立つときは、双極性障害の可能性や治療方針を見直すことがあります。
受診前に「双極性障害だ」と結論を出す必要はありません。眠り方、活動量、落ち込んでいた期間など、実際に起きた変化を伝えることが、診察の手がかりになります。
図を拡大する 初診では、気分だけでなく、睡眠、食事、活動量、仕事や家庭生活への影響を確認します。本人がつらいと感じる症状と、周囲が心配する行動が異なる場合は、その両方を伺います。
うつ状態のつらさは自覚しやすくても、躁状態では、それが症状だと気づきにくいことがあります。「気分がよい」という実感の中に、躁症状がないかも確認します。
うつの時期に加え、元気だった時期の睡眠や行動を振り返ります。「何時間寝ていたか」「仕事や買い物がどのくらい増えたか」など、具体的な変化を伺います。
普段から活動的な人では、活動量が多いことだけでは判断できません。その人自身の普段の状態から、どのくらい変わっていたかを見ていきます。
過去の変化を思い出しにくいときは、予定表や睡眠の記録が参考になる場合があります。本人の意向を確認しながら、家族から見た変化を伺うこともあります。
これまで使った薬と、その後の変化も確認します。薬を始めてから眠らず活動するようになった、落ち着かなさが増えた、といった反応が診断のきっかけになることもあります。
甲状腺の病気や薬剤の影響が、気分や活動性の変化に関係する場合があります。現在の薬、飲酒、身体の病気について確認し、必要に応じて検査を検討します。
初診だけでは診断が定まらないこともあります。初めから無理に病名を当てはめず、症状に対応しながら、経過を見て判断していく場合もあります。
図を拡大する 躁状態では、過度に高まった活動性や興奮を落ち着かせ、睡眠と安全を確保します。うつ状態では、落ち込みや意欲低下を和らげ、日常生活を取り戻していきます。
同じ双極性障害でも、症状や薬との相性などによって、選ぶ薬は変わります。「以前効いた薬だから」と自分で増減せず、今の状態に合わせて調整します。
症状が落ち着いても、気分の波が再び大きくなる可能性は残ります。気分安定薬などによる再発予防を、安定後も続けることが治療の基本です。
今の調子だけでなく、これまでの再発回数や症状の強さ、副作用も踏まえて治療を考えます。どの薬を、どの量で続けるかは、経過に合わせて見直します
薬は治療の中心ですが、それだけで日常生活の困りごとがすべて解決するわけではありません。生活リズム、仕事量、ストレスへの対処、家族との関わり方も整えていきます。
例えば、薬で落ち着いても徹夜の仕事が続いていれば、働き方の相談が必要です。症状を抑えることと、安定を保ちやすい生活をつくることを並行して進めます。
図を拡大する 炭酸リチウムは、躁症状を和らげる治療や、気分の波の再発予防に、今でもメインの薬として用いられます。効果と安全性を確認するため、血液中の薬の濃度や、腎臓・甲状腺の働きを定期的に調べます。
妊娠時にリチウムをどうするかは悩ましい問題です。今日では以前ほどの強い禁忌ではなくなりつつある一方で影響の危険はなお否定できないため、効果とリスクの双方からどうすべきかを検討します。
バルプロ酸は、主に躁状態での気分の高まりや活動性の増加を抑えるために用いられます。眠気や体重変化などを確認し、必要に応じて肝機能や血液の検査を行いつつ使用していきます。
特にイライラが強いタイプにおいて効果を期待する面があります。一方で妊娠中の使用には、胎児の形態や発達へのリスクがあるため、変薬の可能性も含めて慎重に検討します。
ラモトリギンは気分安定薬の中でも特にうつ状態に効果を期待する薬です。双極性障害ではうつ状態が長引きやすいなか、効果が出るとそこを抜けることができる場合があります。
副作用の重い皮膚障害の発生を避けるため、少量からゆっくり増やすことが必要です。服用中に発疹が出た場合は、服用を中止して直ちに医療機関へ連絡し、発熱や口・目の症状もあれば必ず伝えてください。
図を拡大する 「抗精神病薬」という名称でも、双極性障害の躁・うつの治療に使われる薬があります。躁状態の改善に使われることが多いですが、中にはうつ状態や再発予防に有効とされるものもあります。
オランザピンは、双極性障害の躁症状・うつ症状のどちらにも使われます。状態を見ながら、単独で使うか、気分安定薬などと組み合わせるかを考えます。
使用の際には眠気、食欲や体重の増加、血糖値の変化などに注意します。糖尿病がある方には使えないこと、および体重増加が気になって続けにくい場合がある事に注意が必要です。
ルラシドンは、双極性障害のうつ症状を改善するために使われる薬です。単独で使う場合もありますが、気分安定薬と併用して使うことも多く、糖尿病があっても使うことが可能です。
うつ状態の改善に有効な一方で、躁状態への移行のリスクには注意しつつ使うことが大事です。足がソワソワする「アカシジア」が人により出る場合があるので、その点には注意を払います。
クエチアピンは、双極性障害のうつ状態の治療に用いられます。日本でこの適応が認められているのは、薬がゆっくり放出される徐放錠(先発品名ビプレッソ)です。
オランザピンと効果・副作用とも似た面があります。眠気や体重・血糖値の変化などを確認しながら使い、糖尿病やその既往がある場合は使用できません。
図を拡大する 疾患教育では、病気の一般的な知識に加え、自分の症状の現れ方を整理します。再発の前に睡眠が短くなるのか、買い物や連絡が増えるのかなど、過去の経過を振り返ります。
また「安定後も薬の継続が必要なこと」「軽うつ状態で安定すること」の理解も、特に治療途中で葛藤が強まったときに踏みとどまって治療を続け再発を防ぐために重要です。
起床・就寝・食事の時間を大きくずらさず、睡眠を確保することが再発予防の土台になります。特に、元気なときに睡眠を削って活動を増やすパターンには注意します。
双極性障害ではリズムと病状が連動するため生活リズムが変動しやすいことが言われます。そのため、日々の生活リズムを安定させることから気分安定を図っていく側面もあります。
しばしばうつ状態のときには動かず、躁状態の時はたくさん動く事が多いです。しかしそれだとうつ・躁が悪化する結果になるため、意識的に活動量は「気分の逆」にすることが重要です。
具体的にはうつ状態の時にはなるべく動くように、躁状態の時はなるべく刺激を減らして休むように、意識的に取り組んでいきます。それにより気分の波を減らし、再発予防も図っていきます。
家族は、本人が気づきにくい変化を捉える支えになります。ただし、行動のすべてを病気と結びつけると、本人が窮屈に感じ、話し合いにくくなることがあります。
安定している時期に、心配な変化が出たときの声のかけ方や相談先を共有します。買い物や重要な判断への関わり方も、できるだけ本人と相談して決めておきます。
図を拡大する 症状が落ち着くと、「もう薬は必要ないのでは」と感じることがあります。しかし、その安定が、気分安定薬などによる再発予防に支えられている場合があります。
安定後も治療を続けるのは、今の生活を守るためです。 薬の種類や量を受診の中で調整することはあっても、調子がよいという理由だけで自己判断による中断はしないようにします。
軽躁の時期に仕事が進んだ経験があると、「あの頃が本来の自分だった」と感じることがあります。安定した軽うつの状態を、物足りない、能力が落ちたようだと受け止める場合もあります。
この葛藤をどう受け止めるかが、長期的な状態にしばしば大きく影響します。過去の自分と比べすぎず、双極性障害後の今の自分を受け入れたうえでその自分に合った生き方を模索します。
薬を続けにくい理由は様々です。病気への葛藤の他、眠気や体重増加、服薬を続ける負担など、様々な事情があります。特に病気への葛藤がしばしば「服薬」という象徴的な場面で投影されます。
特に双極性障害後の自分を減点法で過去と比べてしまうと、葛藤は強まって受け止めにくくなります。双極性障害を経験した今だから見えることやできる事を生かして、葛藤の克服を図ります。
双極性障害と診断されても、すぐに納得できるとは限りません。「これまでの自分は何だったのか」「将来の予定が変わってしまうのでは」と、戸惑いや喪失感が生じることもあります。
受け入れることは、自分のすべてを病気で説明することではありません。気分の波があるという事実を少しずつ理解し、治療や生活上の工夫なども行いつつ、その後の自分の人生を新しく定義していきます。
治療では、最も活動できていた時期の自分だけを基準にせず、安定した生活の中で、何を続けたいかを考えることを重視します。過去の努力や成果を、すべて病気だったと否定する必要はありません。
例えば、「短期間に多くの成果を出す」から「仕事を長く続け、家族や趣味の時間も保つ」へ、自分を評価する軸を広げていきます。「双極性障害後の新しい自分」を、別人になることではなく、自分の強みや希望を残しながら模索していきます。
図を拡大する 当院では、受診時の落ち込みやイライラだけでなく、それまでの睡眠や活動量、生活の変化を伺います。特に双極Ⅱ型が疑われる場合には、うつ病との違いを慎重に確認します。
一度の診察で無理に結論を出すのではなく、分かっていることと、まだ判断しきれないことを共有します。そのうえで、今の症状と生活への支障に対応していきます。
薬を処方する際は、今の症状を和らげるためなのか、再発を防ぐためなのか、その役割を説明します。安定後も治療を続ける理由を、本人の生活上の目標と結びつけて考えます。
副作用や「飲みたくない」という気持ちも、診療で扱う内容です。薬を続けることだけを求めるのではなく、続けられる治療に近づけるための相談を重ねます。
当院では、周囲から見て落ち着いていることだけを、治療の到達点にはしません。本人が仕事や家庭生活に手応えを感じられているか、無理なく続けられる状態かも確認します。
「以前と同じようにできない」という悩みがあるときは、戻したいことと、調整した方がよいことを整理します。病気の後の人生を狭めるのではなく、続けたい生活を支える治療を考えていきます。
桜ヶ丘こころ診療所は、聖蹟桜ヶ丘駅近くの心療内科・精神科です。躁状態が目立つ場合の他うつ状態が続く双極Ⅱ型疑いの場合も含め、生活にも配慮したうえで薬物療法や生活リズムの調整なども組み合わせ、治療方針を考えていきます。