不安障害

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不安障害について

不安障害は、強い不安や恐怖が続いたり繰り返すことで、仕事や日常生活に支障が出る病気です。治療では、抗うつ薬などの薬物療法、不安に少しずつ向き合う脱感作法、必要な環境調整を組み合わせます。

精神科の外来では、「不安が強い」という相談だけでなく、「電車に乗れない」「人前で話せない」「確認に時間がかかって出かけられない」といった困りごとから診療が始まることもあります。不安の強さに加え、そのために生活がどう変わったかを確認します。

生活への影響が強い時、落ち込みを合併している時、あまりに長く不安が続く時は、受診を考えたい状態です。性格だと思ってあきらめていた症状が、抗うつ薬などの治療によって改善することもあります。

主筆:春日雄一郎

症状の変化に気づく

こんな症状に注意

不安は誰にでもありますが、強い不安が続いたり、不安を避けるために生活が制限されたりしている場合は、治療の対象になることがあります。特に次のような症状が目立つときは、「性格だから」と片づけず、どのような場面で困っているかを振り返ってみてください。

1.急な強い不安

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突然、強い不安とともに動悸や息苦しさ、めまいなどが起こることがあります。「このまま倒れるのではないか」「命にかかわるのではないか」と感じるほど、切迫した怖さを伴う場合もあります。

発作が治まった後も「また起きたらどうしよう」という予期不安が残り、電車や外出を避けるようになることがあります。発作そのものだけでなく、その後の不安で生活が制限されている場合は、パニック障害などの可能性があります。

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2.対人場面での不安

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人前で話す、電話をかける、誰かと食事をするなどの場面で、強い不安が出ることがあります。「変に思われるのではないか」「緊張していることが伝わるのが怖い」と感じ、声や手が震えたり、頭が真っ白になったりします。

予定の何日も前から気になり、終わった後も「あの言い方はおかしかったのでは」と考え続ける場合があります。人と関わる場面を避けるようになり、仕事や日常生活に影響している場合は、社会不安障害などの可能性があります。

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3.ずっと続く不安

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仕事、家族の健康、お金、先の予定など、さまざまな心配が次々に浮かび、気持ちを休められないことがあります。一つの心配が落ち着いても別の不安が現れ、自分でも「考えすぎかもしれない」と思いながら止められません。

気が張った状態が続き、寝つきが悪い、からだに力が入る、疲れやすいといった症状を伴うこともあります。こうした不安が長く続き、日常生活に負担が出ている場合は、全般性不安障害などの可能性があります。

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4.確認を繰り返す

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鍵や火の元、送ったメールなどが気になり、何度確認しても安心できないことがあります。「確認しすぎだ」と感じていても、嫌な考えや不安を打ち消すために、同じことを繰り返してしまいます。

実際に確かめるだけでなく、頭の中で何度も思い返したり、家族に「本当に大丈夫?」と繰り返し聞いたりする場合もあります。確認に多くの時間を取られる、やめようとすると強く苦しくなるなど、生活に支障が出ている場合は、強迫性障害などの可能性があります。

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必要なところから、少しずつ

不安障害を詳しく知る

1.不安障害とは

不安の強さと、生活への影響。強い不安、続く・繰り返す、生活への支障。「気の持ちよう」だけで片づけない。図を拡大する

1-① 強い不安が続き社会生活にも影響する病気

不安障害では、不安や恐怖を自分で調整しにくくなり、仕事や外出、人との関わりなどに影響が出ます。突然強い不安が起こる場合もあれば、特定の場面で緊張する、さまざまな心配が一日中続くといった場合もあります。

診断では、不安の内容だけでなく、続いている期間や生活への支障も確認します。症状の数だけでなく、不安のために何が難しくなっているかが手がかりになります。

1-② 不安を感じること自体は、異常ではない

不安には、危険に備えたり、失敗を防ぐために準備したりする働きがあります。試験の前に緊張する、家族の病気を心配するなど、不安を感じること自体が病気なのではありません。

問題になるのは、状況に比べて不安が強すぎる、落ち着かせようとしても難しい、生活が大きく制限されるといった場合です。「心配する理由があるか」だけではなく、その反応がどこまで負担になっているかを見ていきます。

1-③ 「気の持ちよう」だけで片づけず、治療を考える

不安障害は、「気にしなければよい」と分かっていても、不安や身体の反応を抑えにくい病気です。本人も考えすぎだと感じながら、動悸が止まらない、確認をやめられないなどの状態になることがあります。

治療では、性格を別人のように変えることを目指すわけではありません。不安を和らげつつ、その不安にどう対応するかを見直すことで、生活への影響を減らしていきます。

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2.不安障害の種類と、関連する4つの病気

不安の現れ方と、関連する病気。パニック障害、社会不安障害、全般性不安障害、強迫性障害。症状の出方と生活の変化を確認します。図を拡大する

不安の現れ方によって病名は分かれますが、不安を強く感じることや、回避によって不安が残りやすくなる過程には共通点があります。治療にも、抗うつ薬や脱感作法など重なる部分があり、病名ごとにまったく別の治療をするわけではありません。

2-① パニック障害―突然の発作と、「また起きたら」という不安

パニック障害では、予期しない強い不安とともに、動悸、息苦しさ、めまいなどのパニック発作を繰り返します。発作の最中は、「倒れるのではないか」「死んでしまうのではないか」と感じることがあります。

発作の後に続く「また起きたら」という予期不安も、生活に大きく影響します。ただし、パニック発作が一度起きたことだけで診断は決まらず、繰り返し方やその後の行動の変化などを確認します。

2-② 社会不安障害―人から見られ評価される場面での不安

社会不安障害では、人からどう見られるかが強く気になり、対人場面で不安や身体症状が出ます。会議での発言、電話、人前での食事などで、声や手が震える、赤面する、頭が真っ白になるといった状態になります。

その場だけでなく、何日も前から心配し、終わった後も自分の言動を繰り返し振り返ることがあります。「人付き合いが苦手」という印象の陰で、仕事の選択や日々の行動が制限されていないかを確認します。

2-③ 全般性不安障害―さまざまな心配が次々に浮かび、続く不安

全般性不安障害では、仕事、健康、家族、お金など、日常のさまざまなことへの心配が長く続きます。一つの問題が落ち着いても別の心配が浮かび、自分で考えるのを切り上げにくくなります。

「何となくずっと落ち着かない」「悪いことが起こりそう」と表現されることもあります。緊張が続く中で、不眠、疲れやすさ、筋肉のこわばりなどが目立つ場合もあります。

2-④ 強迫性障害―嫌な考えが離れず、確認などを繰り返す不安

強迫性障害では、望んでいない考えや疑いが繰り返し浮かび、それを打ち消すために確認や手洗いなどを繰り返します。「鍵を閉めたはずなのに戻って確かめる」「汚れが気になり、洗っても終われない」といった状態です。

確認は実際の行動だけでなく、頭の中で何度も思い返す形でも現れます。不安障害の中でも生活への影響が強く目立つ場合も多く、抗うつ薬を充分量使うなど重点的な治療が求められます。

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3.不安障害に共通する症状

こころ・からだ・行動に現れる。こころの症状、からだの症状、回避する行動。不安に伴う変化を見ていきます。図を拡大する

3-① こころの症状―強い不安、緊張、悪い予想が止まらない

こころの症状としては、不安や恐怖に加え、落ち着かなさ、焦り、イライラなどが現れます。「失敗したらどうしよう」と考え続け、目の前の仕事や会話に集中しにくくなる場合もあります。

不安の対象がはっきりしている方もいれば、理由を説明しにくい方もいます。パニック発作のように急に強く表れる場合と、慢性的に長期間不安が強く続く場合があります。

3-② からだの症状―動悸、息苦しさ、胃腸の不調、不眠など

不安は、動悸、息苦しさ、発汗、震え、吐き気、腹痛など、からだの症状としても現れます。緊張が続くことで、肩や首がこわばる、眠れない、疲れが抜けないといった状態になる場合もあります。

体調の相談から、不安との関係を確認していくこともあります。不安障害での身体の症状は、多くの場合強い不安や緊張と連動して発生します。

3-③ 行動の変化―不安な場所や状況を避ける「回避」

不安を感じる場所や行動を避けることを「回避」と呼びます。電車に乗らない、人前で話す仕事を断る、一人で出かけないなど、日々の選択に変化が出ます。

回避すると、その場の不安は軽くなります。しかし、避け続けることで不安に対処する経験が得られず、苦手な場面が慢性的に残るほか、行動範囲が次第に狭まってしまうことがあります。

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4.不安障害と一般的な不安の違い

身近な不安との違いを見る。不安の強さ、仕事・対人関係、生活範囲。避けて楽になることと、回復は別です。図を拡大する

不安障害は、一見身近な「不安」が主な症状の精神疾患です。そのため、しばしば「気の持ちよう」などと言われやすいですが、実際には不安障害と一般的な不安には次のような大きな違いがあります。

4-① 不安の強さ

不安障害での不安は「社会生活に影響が出る」ほど強いものです。たとえばパニック障害での「パニック発作」では、強烈な不安に加えて「命にかかわるのでは」との恐怖を体験し、治まった後にも影響します。

また発作ではない慢性的な不安も非常に強いものです。全般性不安障害の慢性的な不安は一見すると目立ちにくいですが、日々の行動や判断基準もゆるがし、どう生きていくかにも強く影響します。

4-② 仕事や対人関係などへの影響

強い不安が反復・持続する状態は仕事にも強く影響します。不安をやり過ごすために慣れない経験をしばしば回避するようになり、職場では消極的と思われることが少なくありません。

対人関係においても不安や緊張が強く影響します。対人関係を作れず孤立する場合もあれば、強い不安を悪意ある相手に読まれることから不利な扱いを強いられたり搾取されることがあります。

4-③ 生活範囲への影響

回避することで症状が出ていない状態と、不安から回復した状態は同じではありません。 電車を使わなくなって発作が減っても、そのために通勤先や外出先が限られている場合があります。

回避には短期的に楽になる面があるため、その影響に気づきにくいことがあります。しかし長期的な面では消極性や活動範囲の減少など悪影響が強く、重い場合は引きこもりに至ることもあります。

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5.うつ病との違いと共通点

うつ病との違いと共通点。主に不安、主に落ち込み、合併することも。症状や治療には共通する部分もあります。図を拡大する

5-① 違い―主な症状が不安か落ち込みか

不安障害では不安が目立ち、うつ病では落ち込みが目立ちます。主な症状に大きな違いがあるため、一見すると別の病気で大きな違いがあるように見えます。

ただし実際には、イメージほどの違いがない場合がしばしば見られます。この後述べるように、不安障害とうつ病にはいくつか共通点があります。

5-② 共通点―メカニズム・一部の症状・治療法

不安障害もうつ病も、脳レベルでの不調(セロトニンの不足など)が共通して言われています。そしてうつ病に不安はしばしば合併し、不安障害でも経過の中で落ち込みが目立つ事があります。

メカニズムの共通点は治療の共通点にもつながります。不安障害でもうつ病と同様に抗うつ薬(主にSSRI)を使い、続けることで不安症状も改善することが見込まれています。

5-③ 不安障害とうつ病の合併や移行

不安障害とうつ病は、同時にみられることがあります。不安のために生活が制限されていた方に、落ち込みや意欲の低下が加わり、それをきっかけに受診する場合もあります。

また、一方からもう一方へ移行することもあります。うつ病自体は治療でよくなったあと、時間を空けて今度はパニック障害のパニック発作が繰り返されるようになる場合もあります。

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6.不安障害の原因

不安に関わる背景を整理する。脳の働き、元来の特性、出来事の影響。ひとりひとりの背景を見ていきます。図を拡大する

6-① 脳の働き―不安を感じ、調整する仕組みの変化

不安障害には、危険を感じ取ったり、不安を調整したりする脳の働きが関わると考えられています。例えば、心拍が少し速くなったことを「重大な異常ではないか」と受け止め、さらに不安と動悸が強まる場合があります。

この場合はうつ病とメカニズムの共通点の多さが示唆されます。そのためこの要素が強い場合は、うつ病治療時と同様に抗うつ薬を使うことでしばしば十分な改善を見込みます。

6-② 元来の特性―不安の感じやすさや、心配への対処の傾向

もともとの不安の感じやすさや、新しい状況への慎重さなどが、発症や症状の続き方に関係する場合があります。心配が浮かんだときに、考え続けたり、確かめ続けたりする傾向も確認します。

この場合だと、抗うつ薬の効果は限界がある場合もあり、不安に慣らす脱感作にも限界がある事もあります。その場合は、特性の悪影響が出にくい環境を探すことが大事になります。

6-③ 出来事の影響―強いストレス、怖い体験、生活の変化

強いストレスや怖い体験、仕事や家庭の変化をきっかけに、不安が目立ち始めることがあります。人前で強く緊張した経験の後から、似た場面を怖く感じるようになる場合もあります。

この場合には抗うつ薬が効くこともある一方、不安な場面に徐々にでも慣らす脱感作法が特に重要になります。不安のきっかけを回避し続けずに向き合うことで、徐々に改善を図ります。

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7.不安障害を治療しないとどうなるか

不安を抱え込まないために。長引く不安、狭まる活動範囲、重なるうつ症状。必ず悪化するわけではありません。図を拡大する

7-① 不安や緊張が長引き、慢性化する

十分な対処がないまま、不安や緊張が長く続く場合があります。「今日は大丈夫だった」と感じる日があっても、予定が入るたびに不安が強まり、同じ困りごとを繰り返すことがあります。

必ず悪化するわけではありませんが、我慢して時間が過ぎるだけでは改善しにくい場合もあります。時に性格と誤解され、消極的と思われたり相手から低くみられてしまうことが続く場合があります。

7-② 活動範囲が狭くなり、引きこもりに至ることもある

回避が広がると、通勤、買い物、人との交流など、生活のさまざまな場面が難しくなることがあります。初めは特定の電車だけを避けていたのに、一人での外出全体を避けるようになる、といった経過です。

重くなると、自宅からほとんど出られず、引きこもりの状態に至る場合もあります。引きこもりの原因には、うつ病と並んで社会不安障害などの不安障害もあるとされています。

7-③ うつ症状が重なり、うつ病を併発することがある

不安が続く経過の中で、落ち込みや意欲の低下が加わり、うつ病を併発する場合があります。活動が制限され、「以前できていたことができない」というつらさが積み重なることもあります。

両者を合併すると生活の困難や苦痛の増大など影響は大きくなります。一方で治療法には共通点が多いため、治療を行うことで幅広く症状が改善することもあります。

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8.受診の目安―相談を勧めたい3つのサイン

受診を考えたい3つのサイン。生活への強い影響、うつ症状の合併、長く続く不安。すべてがそろわなくても相談できます。図を拡大する

次の3つは、特に受診を勧めたい目安です。すべてがそろう必要はなく、症状が始まって間もない場合でも、つらさや生活への影響が強ければ相談を検討します。

8-① 生活への影響が強い―仕事、外出、人づきあいが難しい

不安のために仕事を休む、必要な外出ができない、確認に時間がかかって支度が進まない場合は、受診を勧めます。生活を保つために、家族の付き添いや代行が欠かせなくなっている場合も同様です。

「何とかできている」場合も、毎回強い苦痛を伴うなら受診が望ましいことがあります。できなくなってからではなく、無理を重ねている段階で状態を確認していくことが望まれます。

8-② うつ症状が重なっている―落ち込み、意欲の低下、楽しめなさがある

不安に加えて、気分の落ち込み、食欲の低下、楽しめない感覚などが続く場合は、早めの受診を勧めます。不安への対処だけでなく、うつ病の可能性や休養の必要性も確認することが望まれます。

症状の強さの一方で、抗うつ薬の継続など治療法は共通している部分が多いため、診断と治療によって改善の実感を望みやすい面もあります。

8-③ 慢性化している―不安が長く続き、自分なりの対処では改善しない

心配や緊張が何か月も続く、同じ場面で繰り返し困る、自分なりに工夫しても改善しない場合は、受診を考えます。「慣れるまで待とう」としている間に、避ける場面が増えていないかも振り返ります。

全般性不安障害のような慢性的な不安は、一見目立たない一方で消極性や誤解につながって実際には大きな影響がしばしば出ています。個人差はあるものの、薬の治療などが思いのほか効く場合もあります。

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9.初診で医師が見ること―不安の強さだけでなく、生活の変化を確認する

初診で一緒に整理すること。不安の始まり・場面、生活で避けていること、体調・薬などの影響、ほかの症状。実際に起きたことから話してください。図を拡大する

9-① いつから、何を、どの場面で怖いと感じるか

初診では、不安が始まった時期と、強くなる場面を伺います。突然起きるのか、人前で目立つのか、一日を通して心配が続くのかなど、不安の出方を整理します。

最初から病名を決めて説明する必要はありません。「朝の電車で動悸がした」「メールを送るまで何度も確認する」など、実際に起きたことから話してください。

9-② 避けていることと、生活を保つために無理をしていること

診察では、不安でできないことだけでなく、避けていることや、周囲に代わってもらっていることも確認します。遠回りして通勤する、一人では買い物に行かないなど、生活上の工夫が手がかりになります。

その工夫を、いきなりやめるよう求めるためではありません。今の生活をどう支えているかを知ったうえで、どこから負担を減らし、活動を取り戻すかを考えます。

9-③ 身体の病気、服薬、カフェインなどの影響

動悸や落ち着かなさには、不整脈や甲状腺の病気などが関係する場合もあります。現在の薬、カフェインの摂取、飲酒なども、必要に応じて確認します。

これまでに受けた検査や、服用中の薬が分かると、診察の参考になります。身体的な原因が疑われる場合は、症状や経過に合わせて検査や他科での診察を検討します。

9-④ うつ症状やほかの病気、緊急性の有無

不安と同時に、落ち込み、意欲の低下、強迫症状などがないかを確認します。過去の気分の波や治療歴も含め、不安以外の病気が関わっていないかを見ていきます。

眠れない、食事が取れないなどの場合は、当面の安全や生活を支える対応を優先します。病名を詳しく整理することと、その日に必要な対処を始めることは並行して進めます。

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10.不安障害の主な治療法

状態に合わせて治療を組み合わせる。薬物療法、脱感作法、環境調整。症状・生活への影響・希望を踏まえて。図を拡大する

10-① 薬物療法―続く不安や緊張を和らげる

薬物療法では、不安や緊張、発作などを和らげ、日常生活を送りやすくすることを目指します。主に抗うつ薬のSSRIなどを用い、発作への頓服薬(抗不安薬)を準備することもあります。

薬が必要かどうかは、症状の強さだけでなく、生活への影響や本人の希望も踏まえて考えます。抗うつ薬は単独の効果のみならず、脱感作などのアプローチの土台になる面もあります。

10-② 系統的脱感作法―不安を回避せず徐々に慣らす

抗うつ薬の治療と並び、不安を回避せずに慣らしていく系統的脱感作法も治療の柱です。特に出来事から不安が強まった場合には、その克服も合わせて大事なアプローチになります。

一方で負担がかかる方法でもあり、一気に慣らそうとするとしばしば逆効果になります。はじめは軽い負担から徐々に行い、体調などが悪い時は無理をしないことが大事です。

10-③ 環境調整―過度の負担を減らし、治療に取り組みやすくする

本来は抗うつ薬と脱感作法が不安障害の治療の柱ですが、元来の性格面の要素が強い場合は、治療や取り組みを行っても特性が残り、環境によっては苦痛が続く場合があります。

その場合は、緊張などの負担を減らすような環境調整が現実的な対策になります。不安や緊張が不利になってしまう環境を離れ、特性が足かせにならない環境を探していきます。

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11.不安障害の薬物療法―SSRIと抗不安薬の役割

薬の役割を理解する。SSRI、継続して効果を確認、頓服の抗不安薬、必要に応じた補助。薬の必要性や使い方を相談します。図を拡大する

11-① 抗うつ薬SSRI―うつ病だけでなく、不安の治療にも使う

SSRIは抗うつ薬の一種ですが、不安障害や強迫性障害の治療にも用いられます。「抗うつ薬が処方されたから、うつ病と診断された」という意味ではありません。

抗うつ薬SSRIは継続して服用しながら効果を確認します。効果が現れるまでには通常2‐4週かかり、一見目立ちにくいですが時間差で不安の改善の効果を見込みます。

11-② 頓服の抗不安薬―必要性を判断し、補助的に使う

強い不安に対して、抗不安薬を頓服として使うことがあります。定期的に使うと耐性や依存の問題があるため、可能な限り頓服で使い、長期的な効果は抗うつ薬を主としていきます。

外出するときなどに「お守り」代わりに持っておく方法が現実的です。「いざとなったら飲める」との安心感が、強い不安やパニック発作への抑止力になる場合もあります。

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12.不安に慣らす「脱感作法」

無理をせず、小さな段階から。順序を考える、少しずつ経験する、体調と休養に注意、生活の目標に合わせる。取り戻したい生活に向けて進めます。図を拡大する

不安障害で薬物療法と並んで重要なのが、不安を回避せず慣らす「脱感作法」です。一方で負担が大きい方法でもあるため、無理せず段階的に行うことが大事になります。

12-① 不安の程度を整理し、取り組む順序を決める

脱感作法では、最も怖いことにいきなり挑戦するのではなく、不安の程度に合わせて取り組む順序を考えます。例えば電車が怖い場合も、乗車時間や混み具合、一人かどうかで負担は変わります。

まず、何が怖く、どの程度なら取り組めそうかを振り返ります。場面ごとの不安の強さを数字で表すことで、どの順番で取り組むかを整理することもあります。

12-② 小さな段階から、避けていたことを経験する

取り組める段階から経験を重ね、不安があっても過ごせることを学んでいきます。人前での発言が怖い場合なら、少人数で短く意見を伝えるなど、生活に合った課題を考えます。

実際に行うと、初めに強い不安が来ます。その後リラックスに努めながらその場に持ちこたえると、次第に慣れて不安が弱まってきます。そこまでの一連の流れを繰り返し経験し、徐々に慣らしていきます。

12-③ 体調や負担に注意を払う

脱感作法は負担の大きな方法です。体調が悪い時に行うとパニック発作が出るなどして逆効果になります。そのため体調不良の時は見合わせ、調子を整えたうえで実践します。

また脱感作実践後は疲弊することが多いです。そのあとに無理をすると調子を崩すため、脱感作後はしっかり休養して再度状態を戻し、万全になってから再度脱感作を行います。

12-④ 無理な挑戦ではなく、取り戻したい生活に合わせて進める

治療の目標は、怖さを我慢できることを証明することではありません。「通勤に電車を使いたい」「家族と買い物に行きたい」など、本人が取り戻したい生活に合わせて進めます。

課題が難しすぎる場合は、条件や段階を調整します。うまくできない日があっても、それだけで治療の失敗とはせず、何が負担だったかを振り返って次の取り組みにつなげます。

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13.不安障害治療の3段階

治療を進める3つの段階。前期:安定を図る、中期:活動を戻す、後期:慎重に減薬。経過と体調に合わせて進めます。図を拡大する

13-① 前期―まずは抗うつ薬の治療を優先

治療の初期は状態が安定せず、まずは発作を防いで不安を減らす事を目標とします。ここでは抗うつ薬での治療を柱として、効果が出るまでは抗不安薬を併用して対策することがあります。

この段階ではまだ脱感作は逆効果になってしまうため行いません。可能な範囲で頭を休ませることを意識していき、薬の効果と合わせて病状の安定化を図ります。

13-② 中期―脱感作を繰り返して活動範囲を戻す

落ち着いてきたら、抗うつ薬は継続しつつも、不安な場面に徐々に慣らしていく「脱感作」を開始していき、体調に気を付けつつ繰り返し行っていきます。

不安障害になると活動範囲が大きく狭まってしまうことが多いです。脱感作を通じて、徐々に苦手な場面を克服することを通じ、活動範囲を発症以前を目標に徐々に戻していきます。

13-③ 後期―慎重に抗うつ薬の減薬と中止を目指す

活動範囲が戻ってきたら、慎重に抗うつ薬を減薬していきます。しばしば一旦活動範囲が狭まりますが、脱感作を並行して行っていくことで、再度活動範囲を戻していきます。

脱感作を並行しつつ徐々に減薬を続けていき、可能なら抗うつ薬を中止し、薬なしでも安定して活動できる状態を目指します。薬なしで安定が続く「治癒」に至ると、治療はいったん終結します。

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14.ご家族へ―安心させようとして、対応に困っているとき

ご家族も、一緒に相談を。困りごとを聞く、対応を一緒に考える、家族の負担も相談。つらさを否定せず、ひとりで抱えない。図を拡大する

14-① 「気にしすぎ」と否定せず、何に困っているかを聞く

家族がまずできるのは、不安の理由を否定するより、本人がどのように困っているかを聞くことです。「何がそんなに怖いの」ではなく、「どんな場面でつらくなるのか」と尋ねるところから始めます。

本人も、怖がりすぎだと分かっていて苦しんでいる場合があります。不安の内容に同意する必要はありませんが、つらさそのものは受け止め、受診や相談につなげます。

14-② 強迫性障害で、何度も確認に付き合っているとき

強迫性障害では、家族に「本当に大丈夫か」と何度も確認する巻き込みが目立つことがあります。安心させるために毎回答えたり、一緒に確認したりすることが、結果として症状の繰り返しを支えてしまう場合があります。

ただし、家族だけの判断で突然すべてを拒むと、本人との関係がこじれることも考えられます。どこまで手伝い、何を少しずつ変えるかを、本人と治療者を交えて相談します。

14-③ 受診や治療を支えながら、家族自身の負担も相談する

家族は治療を支える存在ですが、すべての不安を取り除く役割を背負う必要はありません。付き添いや確認への対応で生活に負担が出ている場合は、そのことも相談の対象になります。

本人が希望する場合は、受診の準備を手伝ったり、診察に同席して家庭での様子を伝えたりする方法があります。治療への取り組みは、他の人と比べず、その人の前進を一緒に確認していきます。

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15.桜ヶ丘こころ診療所での不安障害診療

今、困っていることから。生活の困りごと、治療への不安・事情、取り戻したい生活。希望を伺い、一緒に方針を考えます。図を拡大する

15-① 不安の強さだけでなく、生活のどこで困っているかを伺います

当院では、「不安障害かどうか」という病名だけでなく、今の生活で何が難しくなっているかから診療を始めます。電車に乗れない、会議で話せない、確認が終わらないなど、具体的な困りごとを伺います。

できなくなったことだけでなく、無理をして続けていることや、避けることで保っている生活にも目を向けます。そのうえで、今いちばん負担になっている部分から対応を考えます。

15-② 薬への不安や、仕事・家庭の事情も踏まえて方針を考えます

治療を考える際には、「薬を飲むことが怖い」「仕事を休みにくい」「家族にどう説明すればよいか分からない」といった心配も伺います。治療そのものへの不安を残したまま進めず、目的や選択肢を共有します。

薬物療法だけでなく、不安への対処や環境の調整も含めて方針を考えます。経過が想定と異なる場合は、うつ病などの合併や生活上の負担を確認し、診断や治療を見直します。

15-③ 「不安をなくす」だけでなく、取り戻したい生活を目標にします

当院では、不安が少し和らいだかに加え、本人が望む生活に近づいているかを確認します。「一人で買い物をしたい」「確認に追われず出勤したい」など、具体的な目標を一緒に考えます。

最初の診察で、これまでの経過や今後の希望をすべて整理できている必要はありません。「今、何に一番困っているか」からお話しいただき、休むべき負担と、少しずつ取り戻したい活動を分けて考えていきます。

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桜ヶ丘こころ診療所は、聖蹟桜ヶ丘駅近くの心療内科・精神科です。

当院では、不安障害の種類や症状だけでなく、仕事や家庭生活への影響も確認しながら、薬物療法・脱感作などを組み合わせて治療方針を考えます。

この記事を書いた医師

春日雄一郎医師 顔写真

春日雄一郎

医療法人社団Heart Station 理事長/精神科医

精神科の臨床に携わり、診療所の運営を行っています。また、YouTube「こころ診療所チャンネル」での発信活動にも取り組んでいます。精神科の臨床と情報発信に携わる立場から、こころの病気について解説しています。

本記事は主筆医師が内容を作成し、医学的内容を確認しています。

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